星新一のショートショートは中学時代に読みふけった。自分は中学時代はとても不遇な時代だったので、本がよりどころだった気がする。その当時刊行されていた選集が図書館にあり、読破した。
ショートショートはよく分かるものもあったが、全く分からないものもあった。長編はほとんど分からなかった。長編を読んでいるとき、「どうして星新一はこんなの書いているんだろう?」と思っていた。
高校時代には、文庫で星新一のショートショートの新刊が出たら、必ず買っていた。
星新一のショートショートをほぼ読み尽くしたら、その後は筒井康隆を読んだ。高校時代には没頭していた。大学時代には選集もそろえた。星新一や筒井康隆の小説のジャンルが「SF」というものであることも知った。
当時は「どういうジャンルの本を読んでいるの?」と聞かれたときに「SF」と答えて、SFというものが何なのかを説明する必要があった。今はきっとそんなことは必要ないだろう。
この本によるとSFというものを日本に生み出して、定着したのが星新一であった。その苦労は並大抵のものではなかったようだ。全く評価されずに文壇では冷遇され、苦労の割りには原稿料も安い。しかし世間ではたくさんの人が読んで、新作を待ち望んでいるという、不思議な状態だったらしい。
高校時代に読んでいた筒井康隆のエッセイや小説に出てくる、その当時のSF作家の文壇での評価は、私にとって信じられないことだった。だから筒井康隆がおもしろおかしく書いているんだろうなぁと思っていたら、どうやら現実のものだった。
少年少女に絶大なる人気を誇っていた星新一は、実はそれほど恵まれた環境でもなかったようだった。しかし、後世に語り継がれる偉業を達成する人というものはそうなのかもしれない。
星新一のショートショート、もういっぺん読み直してみようかな?
- 作者:最相 葉月
- メディア: 単行本