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上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

上位概念

上位概念

「どうやって勉強すればいいんですか?」とよく聞かれるが、そのほとんどが「最小の労力で点数の上げ幅を最大にするにはどうすればいいんですか?」という意味であることが多い。勉強に邪道は無い。時間をかけてやったことの上に「効果的な勉強方法」が存在する。それまでの積み重ねが無いにもかかわらず、効果を期待するというのは砂の上に宮殿を作ろうというようなものだ。

しかし、砂の上に宮殿を作ろうとする人は、「答はなんですか?」「答を教えてください。」とすぐ聞く。その答だけを暗記して、宮殿の礎をしっかりしたものにしようとはしない。それではそのうち宮殿はがらがら崩れてしまう。つまり、上位概念が形成されず、また次の単元になったら必ず崩れる宮殿を作ろうとする。必ず崩れるものを何度も作るのははたして「効果的な勉強方法」だろうか?

暗記された記憶は時間とともに消えてしまう。しかし、上位概念で関連づけ(紐付け)された記憶はつながっているので、時間が経っても消えにくいし、ちょっと忘れていたとしても、他の記憶を頼りに引っ張り出すことができる。

古文助動詞「けり」の活用表は、「ラ変型」で、「け」にラ変をくっつけるだけだ。
古文助動詞の過去推量は、過去の助動詞「けり」の「け」に推量の助動詞「む」をくっつけた「けむ」だ。

上記のようなことをひらめくためには、自分の頭の中であーだこーだこねくり回すことによって、生まれてくる。このことを人に教えられたとしても教えられた時点で単なる「知識」であり、上位概念である「知恵」ではない。古文を例にとっていえば、自分で辞書を引いて現代語訳することによってこういう上位概念は生まれてくるが、ガイドや他人のノートを見て現代語訳を暗記する人は、上位概念は形成されない。「あー、これはこうなっているのか。」という鳥瞰的(バードビュー)な視点は生まれないのだ。

特に上位概念が試されるような現代文の記述問題や、小論文の課題に関して、「正解」を先に提示されると思考はそこで止まってしまって、頭の中で上位概念を形成する動きがなされなくなる。上位概念は自分で生み出してこそ意味があるのであり、他から与えられた場合はそれは上位概念では無く単なる知識であり、下位概念(具体的事物)と同レベルになってしまうのだ。

「庭木」「小麦」「犬」「鶏」は何ですか?

と質問された時の頭の働きと、

「庭木」「小麦」「犬」「鶏」は「生き物です」

と答を提示された時の頭の働きは全く違う。

「勉強の仕方」や「正解」をすぐに教えてもらおうと人は、結局は非効率な勉強の仕方をしているのだ。

「勉強に邪道無し。ただ努力あるのみ。」努力してブレイクスルーを待とう。