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上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

面従腹背 前川喜平 毎日新聞出版 2018

面従腹背

面従腹背

前川喜平の初めての単著本だ。寺脇研さんや前川喜平さんの対談や本を読むまで,トップの官僚というのは,何を信念に仕事をするべきなのかというのは,とうてい想像ができなかった。約20年前,「日本の政治は官僚主導でおこなわれている。国民が選んだ政治家が進めていない。」なんていう批判が起こっていた覚えがあるが,今は身勝手な政治家が私物のように政治を動かそうとしている。そこで官僚の大切さが分かってくる。

政治家は国民から選挙で選ばれ、直接国政を信託されている。一方、官僚は競争試験で採用され、その身分が保障されている。故に国民は政治家を取り替えることができるが、官僚を取り替えることができない。そう考えれば、政治家が官僚よりも上位にいなければならない事は当然だ。しかし、官僚には官僚の専門性があり、長年にわたって蓄えられた知識と経験がある。政治家と官僚とのあいだには、ある種の緊張関係がなければないと思う。どちらかがどちらかに依存してしまってはいけない。(pp.221-222)

そういう関係があって,初めて健全に国政を動かせる。どちらかが一方的な力を押しつけてはいけない。

これは,教育にも置きかえられる。どちらかが一方的な力を発揮しては,健全に学校は運営されない。文科省教育委員会,管理職,教員,保護者,児童生徒,地域社会。互いにバランスが取れた状態をいかに保てるかが重要なのだ。だからそれぞれが発言することを,考えることをやめてはいけない。発言や思考をやめさせてはいけない。いい緊張関係を持たなければならない。