Pay it Forward,By Gones

上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

ストーリーを持って論文を書く


うちのゼミ生は今,今年度の研究成果を論文にまとめている。うちのゼミ生にとって論文を書く上で一番大変なのは序章(問題の所在)を書くことのようだ。先行研究を調べ上げ,自分がおこなった研究の「意味づけ」をするのだ。

うちのゼミの「隠れ」テーマは

意味は自分で見つけろ!(by熊徹)

である。実践授業をして,データを取って,会話記録を聞いて,インタビューをして,データ整理をして分析して,結論が出ても,それらがどんな意味なのか分からないままやっていることが多い。私も師匠から「直観は大切で,それは間違っていない。だからその研究を進めて大丈夫だ。」と言われて研究を進めた。そして論文を書くときになり,序章で「意味づけ」をするのに苦労した。

先行研究を調べ続けていくと,なるほど,なるほどと様々な研究にであっていく。そこでしくじるのが,その先行研究に合わせて書いてしまうこと。自分の研究とストーリーがずれてくる。そこに気づかないで書き進めてしまう。

結論は何?と絶えず問うていかないとここを見誤る。自分がこの研究で出した結論は何?それをひとことで言って常に目の前に掲げておくと見誤らない。それがストーリーである。

普通に考えると,序章(問題の所在)を考えて,その後調査して,分析して,結論を出すのが「正当な手順」と思いがちだが,実は違う。論文を書くというのは,「意味づけ」をすることだ。特に大学生や大学院生という学生にとっては,学修の成果を認識する上でとても重要な手続きとなる。この意味づけがきちんとなされれば,単に活動して終わったというようなレベルの低い1年間にはなり得ない。その成果をもって卒業,修了後仕事をしていくことができる。