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上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

「言葉による見方・考え方を働かせる」とは?


火曜2限授業「教科の特質に応じた見方・考え方を働かせる授業づくりの実践と課題」という長いタイトルの授業を受け持っている。各教科で言っている「見方・考え方」とは,どういうことか?をみんなで掘り下げていく授業だ。

2018年改定学習指導要領解説に書かれてあることを読み解いて,「いったい何を授業で身に付けさせるべきなのか?」を考えていこうという授業だ。

今回は「国語」。受講者の1名は現職国語教師で,私も元国語教師と言うことで,リアルな授業を元に考えられた。若いストレートマスターの方は,自分の受けた中学・高校の授業について身近に考えられるので,彼らの意見もとても面白かった。

授業は書かれてあることに対する感想や解釈,疑問を解いていくようなフリートークで進めていく。

以下は話の流れのメモ書き。

小学校と中学校での「見方・考え方」のとらえ方の違い

  • 小学校では日常生活での言語活動を意識するのに対して,中学校では社会生活での言語活動を意識して学ぶ。
  • 中学校になると,外部のコンクールに出品したり,高校受験での面接試験もある。
  • 見知らぬ他者に向けて表現する必要がどんどん出てくる。
  • 敬語の使用も小学校ではあまり子どもたち自身が意識はしないが,中学校に入ると不思議と意識して使うようになる。先輩,後輩という意識が生まれてくる。

「言語感覚」という言葉について

  • 解説の表記に「正誤」,「適否」,「美醜」なんてあるが,「美醜」なんて個人の感覚的なもので,それを始動できるのだろうか?
  • 「言語感覚」とは,語彙と密接に関わっていると思う。たくさんある語のうち,的確に伝わるためにどの語を選ぶのか?その語を使うとどのように伝わり方が違うのか?という「表現の効果」という面がある。
  • 相手意識や目的意識をもった言語表現活動により,「どう伝わるのか?」ということを敏感に捉えられるのが「言語感覚」だ。
  • 「赤面した」と「恥ずかしがった」では,どちらが適切なのか?「うれしい」と「たのしい」ではどちらが適切なのか?を直感的に判断できる感覚のこと。
  • それができるには,経験値が必要。授業で経験値を積ませなければならない。
  • 相手の反応を感じて勉強しなければ得られない。読書だけでは身につかない感覚かもしれない。

「言葉そのものを学習対象としている」とは?

  • 「理解することを直接の目的としない」というのは分かるけれど,理解しなくてもいいということなのか?
  • ということは,読む文章は何でもいいということ?どんな文章でも言葉そのものを学べばいいということ?
  • マンガでもいいの?
  • 台詞や説明のないマンガを読んで,それが説明すればいいの?
  • 要約をして終わりという授業では,言葉そのものを学習しているということにはならない。
  • 「何が書いてあるか?」ではなく,「どう書いてあるのか?」
  • 文章を学ぶ上で「何が書いてあるか?」以外の要素って何があるのだろう?

 1.意味・読解
 2.文法
 3.表現工夫・効果・技法
 4.(語彙の)比較・選択
 5.(文章の)構成・構造
 6.音韻・リズム

  • これらを学べば,表現のヒントになる。自分の文章に役立たせることができる。
  • 「深い読み」に繋げることができる。
  • 他の教科の学びに繋げることができる。応用できる。
  • 書かれてある内容だと,応用はできないが,言葉そのものだと,他の分野に応用できる。
  • 言語活動の基礎となることを学ぶのだろう。