ホラー映画は恐くてほとんど観ないんだけれど,この「イット・フォローズ」のメタファーがすばらしいということで,DVDをかりて観た。
1人でアパートで,夜に観たのだが,めちゃめちゃ恐い。何度もビクツ!となるところがあり,こういう刺激があるホラー映画に耐性がないんだな,と思った。「羊たちの沈黙」とか,「ツイン・ピークス」のようなものは大丈夫なんだけれど。
セックスをすると相手に何かが感染し,感染した人を「何か」が殺しに来るというストーリー。助かるためには他の人とセックスをしないといけない。その他の人が「何か」に殺されると,次には元の人を殺しに来るという。
「何か」は自分の知っている人,知らない人に化けて,どこにでも現れる。「何か」は歩いてくるから,気がついたら自動車で逃げられるが,逃げた先にも何時かは歩いて追ってくる。「何か」は感染したことがある人にしか見えない。気を許すと「何か」は背後に忍び寄っている。
これを見て,「徒然草」第百五十五段を思い出した。
迎ふる気、下に設けたる故に、待ちとる序甚だ速し。生・老・病・死の移り来きたる事、また、これに過ぎたり。四季は、なほ、定まれる序あり。死期は序を待たず。死は、前よりしも来きたらず。かねて後に迫せまれり。人皆死ある事を知りて、待つことしかも急ならざるに、覚えずして来たる。沖の干潟ひかた遥なれども、磯より潮の満つるが如し。
セックスによって「死」が訪れてくるというのは,セックスで子どもが生まれ,生まれた途端に「死」は迫っているという,見事なメタファーだな,と思った。
ただ,映画の中でそれをほのめかしちゃっているのがとても残念だった。あのまま,映画の中では明かさないまま終わらせてほしかったというのが正直な感想だった。そうすれば,もっといろいろと考えられたのに。
それにしても,ホラー映画は一人でアパートで観るもんじゃないな。