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上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

失敗の科学 マシュー・サイド (株)ディスカヴァー21 2016


約16年前、「失敗学会」に1年だけ入っていた。畑村洋太郎さんが設立した学会だ。あまりメリットが無くて1年で脱会したが、失敗から学ぶことに以前から興味があった。

「失敗の科学」では、私が知りたかったことがバッチリ書いてあった。エビデンスをふんだんに使って。どうして航空機業界では飛行機事故の調査はこれでもかというほどおこなわれるのだが、医療業界では、死亡事故は極端にいえば「寿命(病気・怪我の悪化)」として片付けられ、医療ミスがあまり追求されないのか。という話から始まる。

根本的な原因は、失敗の原因から目を逸らそうとする「プライド」や、責任追及から逃れる「保身」などから、真実が明かされないということが多いそうだ。

これは学校現場にも当てはまる。教師自身の行動に対してもそうだし、子どもに対して失敗をしないように「手厚く」手をまわす授業デザインなどもあげられる。学校現場は「失敗」が無いように、あったとしてもそれを認めない文化がある。

この本を元に、最近、高校生への出前授業では、「失敗こそが最高の教材だ」と話している。高校教師の時も授業で「失敗は学びの第一歩」というスローガンをいつも黒板に貼っていた。

自分の失敗は自分のもので、様々な失敗がある。臨機応変にそれを乗り超えたり、対処法を考えることで、素晴らしい学習材料になっていくと出前授業で伝えている。失敗を消したり、無視したりしては、成長が無い。だからどんどん失敗してほしい、学校は安心して失敗できるところで無ければならない。と言っている。

それを話すエビデンスを求める本として最適なものだ。