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上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

なぜモンテビア山形の佐倉監督の話を選手は聴くのか?

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佐倉監督は、ちゃんとした選手経験も無いのに、ジャパンリーグ一部モンテビア山形のトップチーム監督になっている。あ、マンガ「GIANTKILLING」の話です。詳細は
yourpalm.jubenoum.com
に上手にまとまっているので、お読みください。

一般的に現場で汗をかいたことがない人の話は、現場の人は聞かない。テレビドラマでよくある。刑事ドラマでも、金融ドラマでも、なんでも。「けっ、現場のこと知らないで、頭だけで考えていやがる。」なんて現場で働いている人は愚痴を仲間に吐く。

また、スポーツマンガやドラマでも、同じことがよく描かれる。昨年あったラグビードラマなんかがいい例だ。ラグビーをやったことがない人が経営に口出して、かなりのバッシングを受けた。一方、そのスポーツを一生懸命やり、実績がある人の話は、選手はリスペクトを持ってよく聞く。「あの選手が言っているんだから」と、素直に受け入れる。

私は、全くやったことのないスポーツの部活動の顧問をかなりの種類持たされた。若いときはいろいろ足掻いて、そのスポーツを経験したりして、若いからこそ上達して、指導できるようにもなった。しかし、歳を取ったら一切そのスポーツをチャレンジするのを諦めた。だから、技術や戦術に関して、口を出すのもやめた。部活動経営に関して指導したこともあったが、私の人間性も起因してあまり受け入れてもらえたとも思えない時期もあった。

話題にしているサッカーマンガの「GIANTKILLING」でも。しかし、この「GIANTKILLING」の佐倉監督は、選手の経験はほとんどない。サッカーが下手だからだ。下手だからボールも蹴らなくなった。しかし、サッカーが好きだった。好きだったから試合をよく見て、戦術を研究し、選手をよく見てコンディションを把握し、最終的には一部リーグトップチームの監督となった。マンガだからというのもあるが、ちゃんとマンガを読んでいると、納得できることがある。

監督になれたのは、それまでいろんなチームや下部チームの監督をやり、選手に認められてきたからこそなのだ。結果を出してきたからこそなのだ。どんな素晴らしい戦術でも、選手がそれを認め、ついていかないと、その戦術を遂行しようとしない。選手が信頼したからこそ、佐倉監督の話を選手は聴いてきたのだ。

じゃあ、どうして選手が聴いたのか、というと、佐倉監督の徹底した選手へのリスペクト、スタッフへのリスペクトがあったからだ。自分はプレイできなかった分、サッカーに関して、周りの全ての人がリスペクトできる存在だったのだと思う。

自分は27年間高校現場で働いてきて、大学教員としての現場経験は、十分にあるとは思っているが、しかし、現場を離れて5年、かなりそのアドバンテージが劣化してきていると、今春思わされたことがあった。これから現場経験だけではやっていけないんだろう、と実感した。だからこそ、学校現場で働いている人へのリスペクト、生徒へのリスペクトを持って、佐倉監督のように信頼を勝ち取れないといけないんだろうと思った。

自分は辰巳猛のようにはなれないので、佐倉ヒトシを目指さないとだなぁ。と思う残暑厳しい夕であった。