Pay it Forward,By Gones

上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

シェイプ・オブ・ウォーター

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2018年日本公開の映画。第74回ベネチア国際映画祭で金獅子賞、第90回アカデミー賞作品賞、監督賞、作曲賞、美術賞に輝いたファンタジー。どうして劇場で観なかったのだろうと、DVDで観て今更ながら後悔してしまった。ネットで借りるDVDはいまだ「準新作」で値引きしていない。しかし、ずーっと貸し出し中で、たまたまレンタル可になったので、急いで借りた。

2018年は、結構映画を観に行っていた。外国映画では、ジュマンジ、タクシー運転手、デットプール2、スリー・ビルボードデトロイトハン・ソロ、レディ・プレイヤー1、ボヘミアン・ラプソディーなどなど。私が年間ベストと思ったのは「カメラを止めるな!」だった。しかしどうして「シェイプ・オブ・ウォーター」を観に行かなかったのだろう?あれほど話題になっていたのに。自分の映画に対するアンテナが低すぎる。行こうとは思っていたという記憶があるが、何を差し置いても行かねばならなかったと反省しきりだ。

監督はヒロインはわざと不美人の女優を選んだという。映画会社からは美人女優にしないとヒットしないと言われたが、それははねつけたという。外見なんかで勝負しない映画だった。ヒロイン、イライザは耳は聞こえるが、話せない。話せなくなった理由は映画内では語られていないが、トラウマがあったのだと思われる。しかしそれはモンスターの前では全く関係ない。

モンスターも話せない。自分も話せない。どちらもそんなことは気にしない。それで対等な関係だという。映画を観ているとどんどんイライザが美しく見えてくる。モンスターも美しく見えてくる。「神か、怪物か」というキーワードが何度もでてくる。どちらでもあり、どちらでもない。そんなカテゴリに収める必要はない。存在そのものを認めるということがテーマの映画。

一方、1960年代当時の無駄な贅沢を誇ったアメリカの物質文明と、それを支えている無駄なプライドを持った男たちが醜く滑稽に描かれている。そして彼らの心にある差別も露わにしている。彼らは誰も幸せになれない。イライザ、モンスターの優雅さと、男たちの虚しさ。差別しないと自分を保てない哀れさがあった。

イライザの住んでいるアパートは古い映画館の上にある。ちょっとうらやましいのだが、イライザの部屋での水漏れが映画館に降ってくるというシーンが結構好きになった。雨がふる映画でもかけていれば、この当時ながら4DXになったのに……と思ったりして。