Pay it Forward,By Gones

上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

夏の講座ラッシュが終了

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学校現場の夏休みに合わせて毎年講座講師に呼ばれるのだが、大学に登録する出前講座(講師料無料)の条件をちょっと変えたので、今年はあまり呼ばれなくなった。そんな中でも講師として招へいしてくれたものや、自分から開いた講座が合計で5つあり、本日終了した。

アカデミックインターンシップ(於:本学 7月28日(水))

新潟県教育委員会主催の、高校生対象大学等講義体験。本当は大学の先にある社会の課題を意識してもらおうという目的のようだが、私はゼミ生と「デジタルシチズンシップ」をテーマに行った。参加者3名。
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当初はそれぞれのデジタル上の情報発信をどう受けとるかを考察しようと10名以上の講座を想定していて、開講しないことも考えたのだが、せっかくこんなマイナーなテーマを選んでくれらのだから、ということで開講した。開講してよかった。高校生の屈託のない生の意見を聞くことのなんと貴重なことよ。そうか、こういう講座には、こんな意味があったのか。

高校生とのディスカッションは面白い。

新潟県私学中学校高等学校教育研修会(於:ナスパニューオータニ 8月17日(火)〜18日(水))

今春に依頼があり、高校国語の先生方に対して、ICT活用授業や、新教育課程、協同学習などについての実践発表へのコメントをしてくれという話だったので、引き受けた。その後、70分程度のテーマに関する講演もしてくれと追加注文があり、引き受けた。

講演の依頼があると、それに関していろいろ調べるので、自分の研究になる。ICT活用授業は知識定着に効果があるという研究はあるのだが、「どうして」効果があるのかの実証的データがほとんどないことを知ったり、ICT活用授業のどの要素が効果に影響しているのか?ということもあまりいわれていないので、自分で本を読みあさってリストアップしたりした。

初日の私の講演は午後からなのだが、午前中から呼ばれて、何があるのかな?と思ったら、お昼も出してくれたり、全体講演を聴いたりすることができた。午後の講演では、上記の私がまとめたことを話したり、iPadも持ち込んで、ICT導入による国語科授業デザインを体験してもらえた。これは、アカデミックインターンシップで行った「デジタル上の情報発信をどう受けとるか」を体験してもらうプログラムを流用できた。各講座は繋がっているんだと思った。(二番煎じ?)

2日目は、3名の先生が、ご自分の授業実践を発表してくれた。「ICT導入」が先行事項にあり、どのように奮闘して効果的な実践に持っていったかを熱く語ってくれた。どの先生も御自身の受け持った生徒たちの反応を笑顔で語ってくれて、「こんなに素晴らしいでしょう?」と自慢しているようでもあり、それこそがこの研修会の大きな意味なんだと思った。発表はどんどん伸び、私は10分間で3つの実践報告にコメントをしなければならなかった。

去年は中止だったようだが、毎年開催し、全国大会もあると言うことを始めて知り、新潟の私学はこの湯沢で毎夏熱い研修が繰り広げられているのかと驚いた。

ナスパニューオータニの風呂とサウナは最高だった。
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新潟県直江津中等教育学校 大学講義体験講座 群読(於:レインボーセンター 8月20日(金))

初めは「出前講座」としてアポを取ってきてくれたのだが、その計画があまりにも長時間であるので、ちょっと引き受けかねると返答したら、「出前講座」ではなく、講演依頼として依頼してきてくれた。

午前2時間、午後2時間の入れ替え制群読講座は、かなりの体力を消耗した。最近の私の群読講座は「俳句ラップ群読」だ。

俳句の群読を作るのだが、これを作るのに俳句の表現そのものではなく、その俳句に表現されている背景や思いを考え、しかもそれを「ライム(韻)」に合わせて作るというかなり高度なのだが、表現してぴったりはまるとめちゃくちゃ気持ちいい群読となる。これが高校生たちにぴったりはまる。

ラップは知っているが、ラップを口にしたこともないし、作ったこともないという高校生がほとんど(私もそう)だが、こういう機会で作ってみると熱中してしまうらしい。俳句ラップ群読は、この講座の終盤部に設定するのだが、私が作ったラップビートをスピーカーでずーっとかけていると、どんどん頭の中がラップ脳になっていくことが分かる。

それでも、こういう授業って、こういう講座でしかできないんだろうな。普通の高校の授業じゃ無理なのかな?でも導入して欲しいな、と、切に思う。「ライム(韻)」を意識した国語の授業って、皆無だ。漢詩で韻のルールを覚えるだけで、それを体感することもない。ましてや自分で韻をつくり出すことなんてしない。表現無くして何が理解だ!と訴えたい。

参加した生徒さん達にGoogleフォームで答えてもらったアンケートだが、ラップをやってみて楽しかったというのと、ビートに合わせて声を発するというのが、予想以上に好評だった。

長野県教育委員会上越教育大学教職大学院との連携講座(長野講座) (オンライン 8月26日(木))

当初は長野県総合教育センターで行う予定だったのだが、約3週間前に長野県では対面の研修会が禁止となり、オンラインで行うこととなった。

演習で、グループワークを考えていたのだが、どうやればそれが実現するか?と担当のセンター職員と相談していたら、GoogleClassRoomが使えるので、それぞれにアカウントを割り振り、Zoomで行えるということだった。GoogleClassRoomを使えるのは、ありがたいと思い、今までテキストベースで作っていた内容をGoogleClassRoomのクラス内に作って行った。

先に示した「デジタル上の情報発信をどう受けとるか」のプログラムをもとに、その活動で「対話」はどのように起こっているのか?を考えてもらうのをテーマとした。「会話」と「対話」は違う、話し合わせれば「対話的学び」ができるわけじゃないということを分かってもらいたかった。

しかしトラブル大発生。全員Zoomには入れているのだが、GoogleClassRoomに入ることができない。教委配布の端末によって、アカウントを受け付けないものがあるということが分かった。GoogleClassRoomに入らせることで、Zoom内世界はその対応に追われて、もう既に正常にアクセスできている人を置いてきぼりにしてしまう。大反省である。

Zoomにヘルプのためのブレイクアウトルームを作り、その人をそこに移動させて、そこだけでアクセス方法の指示を取ればよかったと、担当のセンター職員と後になって反省をした。

そしてそんなことで時間が経過してしまったので、メインイベントである、「各自が対話的デジタル授業デザインを作る」は、話し合いだけで終わり、実際それをみんなに体験してもらうことはできなかった。対面だったら、Chromebookが用意されていて、絶対にそんなトラブルはなかったんだよなぁと、後悔先に立たず。

しかし、これからリモート研修が続くのかもしれない。こういう経験を次に活かそうと、担当職員のT先生と傷をなめ合った。

静岡県立F高等学校職員(有志)研修会(合同ゼミ)(オンライン 8月27日(金))

当初の予定は静岡から上越教育大学にいらしてもらって、うちのゼミとの合同ゼミを行う予定だったのだが、オリンピック後、急速にコロナ禍がひどくなったので、やむなく中止とし、オンライン研修とした。

うちのゼミからはNissyが来週から行うデジタルシチズンシップ授業デザインをF高校の先生に見てもらい、現場の高校生は実際にその課題をどう捉えるか?というアドバイスをいただいた。ほぼ初対面なのだが、どんどん意見をいただき、本当にありがたかった。授業経験がまだまだ少ないNissyには、有益な情報ばかりだったと思う。「その言葉の使い方で高校生はどうイメージをするか?」とか、「1時間でおこなおうと思っているその2つの課題は、各1時間使ってやるべきだ」とか、Nissyにとって、机上では想定できなかったアドバイスをいただき、月曜日の授業実践に活かしてくれただろう。

F高校からは、来年度から始まる新教育課程で変わる評価の仕方の話題を提供してもらった。高校でも観点別評価をしなければならない。今、ほとんどの高校では、指導要録では5段階の数値による評価がされ、各学期ごとは100段階の数値による評価がされている。それを来年度から観点別に評価(A〜C)をし、それをもとに各教科で評価をすることになった。

って、これって、義務では今までも普通にやっていたことじゃないの?というツッコミを入れたいのだが、高校でこんなことが導入されるということは、「高校のこれまでの評価の仕方はダメだよ」というメッセージだ。F高校では、毎学期評価に関する研修会を開き、「知識・技能」、「関心・理解・表現」、「主体性」とは何か、それぞれの関係などを考えてきたということだ。きっとそんな学校は稀なんだと思う。

ほとんどの高校ではきっとそういう解釈は「とりあえず」放っておかれ、ペーパーテストで行っているものを、どのようにその3つに割り振るか?としか考えていないんだろうと容易に想像できる。いやいや、ペーパーテストでは、「主体性」なんて評価できないよ、というツッコミは無視されるんだろう。ペーパーテストだけで評価をしているから、この改革になったんじゃないの?

なんていう話をあーだ、こーだやりとりして、あっという間に時間が来てしまった。

Zoomでも、こんな楽しい会ができる。実際に来てくれたら、飲み会は盛り上がっただろうな、と、とても残念だった。今後定期的にこんな会を開こうという話になった。

上越教育大学附属中学校わくわく大学デー(於:上越教育大学 8月30日(月))

コロナ禍で実施が危ぶまれたが、対面で実施できることになった。5年前に群読講座を行ったのだが、今回は、最近の研究対象「デジタルシチズンシップをどう身に付けるか」だ

午前、午後の講座各5名の中学生がこの講座を選んでくれた。こんなマイナーなわかりにくい講座を選んでくれるのは、きっと聡明なお子さんたちなのだろう、との期待で実施した。

「デジタルシチズンシップとは」のレクチャー後、いつもの「どんな情報を信じるのか?」ワークショップを行う。各講座4名という少人数だったので、私が作ったあおり記事、以前の講座で「いいね」が多く付いた記事をそれぞれ1つずつ加え、1記事につき4投稿で「いいね」を付けさせた。

1つの講座では、私のあおり記事に「いいね」が集まった。他では、受講者の記事に「いいね」が付いた。「いいね」を付けた意図と投稿の意図をそれぞれ話してもらって、「意図」を互いに感じてもらった。この演習と「デジタルシチズンシップ」を結びつけるものがちょっと弱いなぁと、まだまだ修正が必要だと感じた。

最後のディスカッションでは、「恐いもの・こと」の話題にし、どうして「恐い」のか?それは、その存在を「信じているから」というように導き、なぜ、「無いといわれているのにその存在を信じているのか?」という話題に持っていったのだが、結構難しかったようで、話題がつまってしまった。

「自分の思いは存在する」から「私は存在する」という人間存在の話題になったり、学者が調査している教科書内容より、行政が集計したデータの方が信じられるという話題も出たりして、結構ディープな時間帯もあった。中学生ながら歯ごたえのあるディスカッションだった。

しかし、パッケージとしてのこのプログラムは、改善の余地がまだまだあると反省した。