Pay it Forward,By Gones

上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

国語科授業での様々な 「対話的学び」の生起す る授業デザイン


長野県教育委員会上越教育大学教職大学院のコラボ企画でタイトルの講座を行った。

ここ2年間オンライン講座なので、「対話」というテーマなのに、もどかしくてしょうがない。

しかし、長野県総合教育センターの方々のご尽力で去年よりもスムーズに講座は進行した。去年は接続できないやら、なんやら、Zoomでの参加者を巻き込んで、なかなか始められなかった。今年は事前に接続確認やら資料等の配布もしてもらえて、トラブルは最小限になっていたと思う。感謝である。

目標は

ICT活用による国語科授業の今後の可能性を考える

と設定した。国語科の授業は、教科書とノートとワークシートと黒板だけで成立する。十分成立するので、「ICTを導入すればもっと素晴らしい授業ができる」と考えにくい。この点、数学にも通じるのでは?と思ってしまう。

しかし、ICTを使うと、今までできなかったことができるよ、ということを示すのがこうの講座の私の目標だった。

次の活動を行った。

句会

「秋の句」というお題で宿題として講座開始までに一句作ってきてもらい、次のような手順で句会を開催した。

  1. Googleフォームで句を提出
  2. 提出された句を選句フォームにコピペ
  3. 選句
  4. フォームの自動集計を元に上位句を選んだ人からのコメント
  5. 上位句の作者名乗り&コメント

時間が足りなかったので、一句のみの紹介だったが、3〜4句できたらよかった。

句会はICTを使わなくてももちろんできるのだが、ICTを使うことで、次のメリットが生まれる。

  • 匿名性の担保
  • 集計の自動化

これは、教室で、誰がどの句を作ったか?というのが、選ばれなかった句の場合、または、名乗りがされない句の場合、詮索されなくなる。全てあけすけである必要は全く無い。

そして、人数が多い場合、集計はやっかいになるのだが、フォームで投票すると自動化され、そこに時間を割く必要は全く無くなる。「回答結果を閲覧」設定をすれば、投票の仕方によって、誰がどこに投票したかを隠して、自分の句に投票がどのくらい集まったかを確認できる。

「対話」なのだが、句を介して作者と選者の対話がなされ、作者の意図がどのくらい伝わったか、選者の解釈と作者の意図のずれを確認し、対話が生まれる。

人と人の間に何かを咬ませると対話はスムーズになるのでは?との提案をした。

アナウンス講座

長野講座で初めての試みだったのだが、「音声言語表現作品を提出する」ということをおこなった。もしかしたら、これは、コロナ禍でありながら、オンラインだから、伸び伸びと音声言語表現できたかもしれない。対面でも換気して広い教室で行う予定だったから、感染のリスクは低かっただろうけれど。

  1. スライドショーに合わせたアナウンスを閲覧
  2. アナウンスなしスライドショーを画面共有で流し、それぞれが1度練習をする
  3. アナウンスなしスライドショーをダウンロードし、それに合わせて各自が練習
  4. 用意したPowerPointスライドにアフレコを吹き込み保存
  5. Googleフォームのファイル送信フォームで提出
  6. 全体に共有

という流れでおこなおうと思ったのだが、最後の「全体に共有」は、時間がほぼ取れなかったのと、皆さんが録音操作が上手く行かず、あまり提出できなかったのとで、できなかった。その代わりに、ブレイクアウトルームで、各自が部分的にスライドショーに合わせてナレーションをするという形に変えた。

アナウンスは、長野県のフリーアナウンサー草田道代さんに吹き込んでもらい、プロのアナウンス技術を提示できた。私もそうだったが、スライドに合わせてナレーションをするというのが、いかに難しいかを体験してもらえた。

教師は尺を意識して喋る感覚が疎い

というのが私も含めてあるので、それを意識して、スライドの切りかえやBGMの雰囲気にバッチリ合わせてアナウンスできるとこれほど気持ちいいのだということも経験してもらいたかった。

また、児童・生徒にとって、音声言語表現活動の発表となると、人前で話すという選択肢以外無いのが学校の現状である。人前で発表するということは、かなりのハードルの高さがある。人前に立つだけで恥ずかしがり、ニヤニヤして、笑い出して発表が始まらないということは経験したことがあるだろう。

人前で話さなくても音声言語表現活動ってできるし、その作品を提出できるということを知ってもらい、音声言語表現活動の授業の選択肢を多くしてほしいという思いがあった。

これは、アナウンス原稿との対話、どう読めば、どのように聞いてくれるか?ということを自己内対話する活動だった。

対話とは?

「対話」というと、「グループで話し合えばいいんでしょ?」と思っているのが教育現場のほとんどだ。しかし、それは対話でも何でもなくって、「会話」、「話し合い」であり、「対話」になっていないものがほとんどだ。「初めは自分で考えて、その後グループで話し合って」なんて取り決めるのは、「発表会」であって、対話でも何でもない。

国語科は、テキストとの対話、テキストを介した他者との対話、他者を想定した自己内対話などが比較的しやすい教科だ。グループ内発表、話し合い、意見の言い合いが「対話」と捉えてほしくない。

120分の講座だったのだが、盛りだくさんすぎて、収まりきれなかったのだが、「こういう使い方があるんだ」と知ってもらえれば、本講座の目標は達成できたと思っている。この講座、出前講座でも設置しているのだが、今シーズンオファー「0」なんだよな……。