Pay it Forward,By Gones

上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

プラットフォーム


2019年 スペイン Amazon Prime Video視聴

これも町山智浩さんからラジオで教えてもらったもの。Amazon Prime Videoの私へのお勧めに突如として現れた。こういう映画を見ている傾向があるのだろうか?

それはそうと、刺激的すぎる映画だ。もしこれを映画館で見ていたら、きっとダメージはもっと大きかっただろう。

主人公は突如学校の教室ほどの広さの、コンクリート打ちっぱなしで、ベッドとトイレと水道しか無い部屋で目覚めた。部屋の真ん中に四畳半くらいの穴が空いている。だから上にも下にも部屋がずっと続いていることが分かる。48と壁に彫ってあるから、上には47部屋あるのだと分かるが、下は何階あるのかは覗いてみても分からない。

同居人がいろいろ教えてくれたりくれなかったりする。警告音が鳴り、上から中央の穴ぴったりの大きさのプラットフォーム(=テーブル、といっても、空に浮いている)が降りてきて、そこにはそのプラットフォームいっぱいの、食い散らかされた(もともとは)豪華な食事が降りてくる。同居人は即座に食べ始める。主人公は、そんな食い散らかされたものを食べる気にはならない。同居人は素手で汚く食べ、警告音とともにテーブルが下の階に降りていくときに、手に持っていた食べかけを放り投げ、つばも吐く。

どうやらこの食事でしか命を食いつなぐことはできないようだ。プラットフォームにある食べ物をそれが降りていってから保管していると、部屋が死ぬほど暑くなったり寒くなったりする。「貯蓄」はできないようになっている。

1カ月すると眠くなり、全員が部屋を入れ替わるようだ。そのルールは分からない。同居人は先月は200階台で生死の境をさまよったそうだ。200階ともなれば、残っている食事は皆無だ。

こんなことは現実にはあり得ないと言うことは、何かを象徴している映画というのが分かってくる。上の階の人たちは有り余る食事を食べ散らかし、下の階の人たちはそのおこぼれにも預かれない。格差社会を象徴的に描いている。上の階の人たちは、必要以上のものを食べるから、下の階の人たちは食べられない。上の階の人たちが適量を食べていれば、全ての人たちに食事は行き渡るはずなのに。

下の階の人たちは食べるものが無いから、人殺しも行われる。人肉も食べる。そうしないと生きていられないのだ。

何とか生き延び、そのうち主人公は上の階に移動できた。一桁台の階だ。

どうすれば全員が生き延びられるか知っているのに、上の階の人たちはそれをしようとはしない。主人公も同じだ。

格差社会は自分の利益を優先していると、解消することはない

また階が変わり、同居人も変わる。その同居人は全員が生き延びる方法を実践しようとする。プラットフォームが来たら、2つの皿にそれぞれ1人分の食事を取り、1つの皿分だけ食べ、もう1皿は下の階の人の分で、プラットフォームが降りていくときに、下の人にも同じようにするように伝える。しかし、下の階の人はそんなことをしようとしない。

そんなのはどうせ無駄だと思っている主人公は、無視して自分の分を手づかみで食べる。しかし、何度も何度も同居人がおこなうので、気が変わり、下の階の人に「この人の言うとおりにしないと、食事の上にクソをする。」と伝える。

世を手っ取り早く変えるためには暴力が必要

同居人はその言動に同意しなくとも、下の階の人が指示通りにしてくれたから、その効果は渋々認める。

その後、同居人が変わり、本当に全員が生き延びるために行動する。プラットフォームに2人で乗り、上の階の人たちには食事を与えず、食べようとしたら暴力で阻止し、下の階になったら、その日生きていける分を分け与えるのだ。

世の中を変えるためには、口先だけでは無理で、実際に行動することが必要

・・・この先は書かないが、この映画の中に社会の仕組みとその問題、世の中の歴史、宗教の意味等、全てが詰まっていると見取れた。凄すぎる映画。Amazon Prime Videoで、自分の部屋で見ているからと言って、途中で止められない映画だった。

スペイン映画、考えさせられる。