今日の「中学校高等学校国語科授業づくり演習」のテーマは梶井基次郎「檸檬」だった。担当者が「檸檬」を提示すると,「うーん,……」という声が上がった。授業でどうするか,つかみ所がない教材という印象を持っている人が多かった。
以下,出された話題をトピックだけあげていく。
- これは漠然とした不安がテーマだから,みんなの中にある漠然とした不安は何かを出してもらうというのは,授業としていいのか?
- 本当に「漠然とした不安」がテーマなの?そんなことはどこに書いてあるかな?テキストから読み取らないと。我々が読み取ったものを「漠然とした不安」と置きかえて,意味づけして与えては,学習者が読み取ったことにならない。
- 「不吉な塊」とあるんだから,「漠然とした不安」じゃなくて,「不吉な塊」と表現するべき。
- 「不吉な塊」の象徴が「丸善」何だよね?
- そうなの?
- 主人公は以前は丸善にあるようなものに惹かれていたけれど,今の境遇では「みずぼらしくて美しいもの」に惹かれてきたんだよね。
- そして丸善は「重苦しい場所」になった。
- 最終的にレモンを置くことで,どっちに惹かれるようになったんだろう?
- レモンは「不吉な魂」,「みずぼらしくて美しいもの」のどっちなんだろう?
- どっちでもないもの?
- 「不吉な塊」から遠ざけてくれるものだろうけれど,「みずぼらしくて美しいもの」とも違う。
- 結末では結局主人公の気分は上がったの?下がったまま?
- 「京極」が「活動写真の看板画が奇体な趣で街を彩っている」のだから,「裏通り」ではなく大通りだよね。きっと。映画館があるんだから。
- ということは,今までの「裏通り」から離れていった?
- レモンは何だったのか,決め手はないけれど,少なくとも「不吉な塊」を少しは消し去るものなのかな?
- レモンは何の象徴か?とした場合,とっても表現しにくいものだよね。これをテーマにすると授業では収拾が付かなくなるかも。個人個人によっては違いすぎるから,拡散的課題にしかならない。それはそれで面白いんだろうけれど。
- 結末では気分が上がった?下がった?なんてのは?
- レモンは「不吉な塊」,「みずぼらしくて美しいもの」のどちらか?またはどちらでもないのか? とか。
- レモンは新しい自分にしてくれた何かかな?
- なんか,収束しないまま時間が来たけれど,少しは教材としてイメージをつかめたでしょうか?