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上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

読書の効用

検証・学歴の効用

検証・学歴の効用

「読書をすると成績が上がる」とか,「読書をすると論理的思考力が身につく」とか,まことしやかに言われているけれど,エビデンスに基づいて読書の効用について書かれた論文は読んだことがなかった。御存じの方は,読みたいので教えてほしい。

そんな中で,エビデンスに基づいた論文を見つけた。

「検証・学歴の効用」濱中淳子,勁草書房,2013

調査方法は,アンケートで,大学時代の読書傾向と,現在の読書傾向,そして現在の所得を調べている。工学系と経済系の大学生のデータだけなのだが,現在の読書傾向と現在の所得には,相関関係があるというのだ。

簡単に言うと,現在の読書傾向が,マンガや趣味・娯楽書の比重が多い場合,所得はそうでないひとに比べると有意に低いというのだ。これは,工学系,経済系どちらにも言える。

そして,現在マンガや趣味・娯楽書の比重が多いのは,大学時代にもマンガや趣味・娯楽書の比重が多かったという結果が出た。

逆に言うと,大学時代に専門書,思想書,純文学,ビジネス書,専門書などを読んでいると,現在もそれらの読書傾向が続き,所得も有意に多いというものだ。

大学時代に自分の専門に関する本を多く読んでいると,結果的には所得が多くなるという結果が出ている。

因果関係は述べられていないが,大学時代自分の専門に入り込み,その専門に関する本を多く読むと,専門の職業への就職につながり,所得が多くなるという流れであろう。

もちろん,所得が全てと言うことではないが,1つの指針を示している。