Pay it Forward,By Gones

上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

学部2年生授業「教育実践基礎論」最終回での話

f:id:F-Katagiri:20200129135526j:plain
昨日は私が学部で持っている唯一の授業の最終回だった。受講生の半期の授業を受けた後で学んだことのスピーチだったが、人数が多く、最後に私がコメントする時間がなかったので、GoogleClassRoomに以下の文章をアップした。

昨日はスピーチご苦労さまでした。みなさんプレゼンテーションが上手で、スライドを巧みに使っていました。学習成果発表会を見にいった影響でしょうか?

私の時間管理が甘く、授業時間内に全てのスピーチが終わらなかったことが失敗でした。

さて、最後の授業に何も言えなかったので、こちらに書きます。よければ読んで下さい。

ディベートについて》
1)ディベートは「論理」だけで成り立っています。自分の意見とか、感覚、感情とは別のところで戦います。だから、自分や相手を客観的にみつめることができます。授業でやったような本格的なディベートを経験するということはあまりないかもしれません。しかし、経験するとその力が生きます。

2)卒業論文を仕上げるとき、「エビデンス」が重要になってきます。つまり、ディベートでおこなった「根拠」です。この根拠がしっかりしていないとどんな素晴らしい主張も「絵に描いた餅」となります。絶えず根拠を問う姿勢を身につけて欲しいと思います。

3)みなさんが教員になったとき、また、その数年後、「学級」は今よりも存在感が薄いものになっている可能性があります。学級が原因となる問題(いじめ、学級カーストなど)が話題になり、選択授業、学級選択制、教科担任制が今よりも広まってくると思われます。大学院の授業で「学級の民主化」を取り扱いました。民主的な見方、考え方を身に付けるには、学級担任が専制的では不可能です。民主的な見方、考え方を持った教師を目指して欲しいと思います。

《模擬授業について》
4)スピーチでこのことを話した人もいましたが、準備にどれだけ時間をかけたかで、模擬授業をやったことによる学びは違います。いい加減な準備で模擬授業をしても何も身につきません。これから指導案をたくさん書く機会があると思います。脳内フル稼働で作ってください。たくさんの人が「学習・課題・評価の一体化」をスピーチで挙げていました。一貫性のある学習・課題・評価なのか、授業者も学習者も共有できる学習・課題・評価なのかを意識してください。

5)ディベートと模擬授業を関連させて考え、スピーチしていた人もいました。このように、なんでも自分が見聞きしたこと、経験したことを関連させて考えられるというのは、素晴らしい学びです。私の研究室のスローガンは「意味は自分で見つけろ」です。自分で意味が見つけられるような大人を育てたいと思っています。教師が与えた知識だけではいけません。子ども各自が意味を見つけられるような授業が理想です。これが模擬授業のコメントに書いた「学習結果の主体性」です。

6)それらのことは訓練しなければ気づきません。身につきません。模擬授業の事前課題の時に、たくさんのツッコミをしました。「全否定」的なツッコミで、総書き換えをした人もいると思います。ちょっと厳しすぎたかもしれませんが、それに対して真剣に考えて、対案を作って返答した人もたくさんいました。「つながり」を考えることが大事です。つながっていない、とか、何とつながっているのかは対話によって気づきます。是非、指導案を作るとき、他の課題を作るとき、知人や先生に見せて、意見をもらってください。相談してください。そうすることで新たな気づきが得られます。これが「深い学び」です。

7)たくさん、様々な情報を仕入れてください。テレビ、新聞、雑誌、本などを閲覧してください。みなさんはまだまだ社会に出ていないのですから、社会経験がありません。その分時間がありますので、情報を仕入れる時間は有り余っています。それらの情報が、今目の前の学習課題と、それがどう社会に生きる力になるのかの橋渡しになります。特にSDGsに関わる情報は、これからの教育で重要になります。私の情報源で多くを占めるのは、テレビです。「クローズアップ現代+」、「又吉直樹のヘウレーカ!」、「NHKスペシャル」、「町山智浩アメリカの今を知るテレビ」などで、「今」の情報を仕入れています。グレタさんのことをほとんどの人が知らなかったのは、愕然としてしまいました。ショックでした。じゃあ、ママラさんのことも知らないのかな?

8)今年度は受講者が多かったので、参観者役も作りました。新たな試みだったのですが、新たな学びがあったんじゃないかな?と思います。みなさん細かく学習者の様子を書いていたり、授業者の目標が伝わったかどうかを率直に書いてくれました。これは模擬授業の学習者をしていてはできない学びだったと思います。

9)自分の模擬授業のビデオは今のうちにダウンロードして保存しておいてください。そのうち、閲覧できなくなる可能性があります(私が退職すると、アカウントが廃止されます。)みなさんが教員になって、「中堅」と呼ばれる歳になったとき、ビデオを見返すと、自分の今の授業と明らかに違っていると思います。それを比較してみてください。そして自分の成長を実感してください。

10)とはいえ、みなさんの模擬授業は私の初任の頃の授業に比べたら、段違いによいものです。私の初任時には、「目標・学習・評価」なんて、全く考えたことがありません。そんなことが必要だとも思っていませんでした。目標にも向かわない、それを設定する気も無い授業でした。ああ、ビデオカメラが庶民には手に入れられるほど安価じゃ無くてよかった、と思いますが、それでも、記録されていたら、みなさんに見てもらって安心してもらえたかもしれません。

《スピーチ》
11)自分のスピーチを見返してみてください。カメラ(私)に視線を向けているかどうかを確認してください。私はほとんどみなさんを見つめていたのですが、なかなか聞いている人に視線を合わせることが難しい人が多かったです。パソコンだけを見つめていたり、スクリーンばかり見ているだけだったり。でも、誰に話しているのかというと、目の前の人です。その人に視線を合わせるだけで、説得力は段違いです。これは教室で子どもたちに話すときと同じです。今のうちに視線を合わせる訓練をしましょう。

《その他》
12)「音声言語表現活動」の大切さを半年前よりもわかってくれたんじゃないかな?と思います。模擬授業時の自分の発話記録を提出させたのもそういう意図がありました。自分はどんな口癖があるのか、声が大きいのか、うなずきがあるのか、一文の長さがどのくらいなのか、など、「音声言語表現活動」を意識して大学で勉強してください。ちなみに、「音声言語表現活動研究会」を月イチで開いています。明日、1月30日(木)開催します。内容は「ラップ」です。来月は百人一首大会の予定です。時間があったら参加して下さい。

13)せっかくの縁ですので、指導案作成やその他で悩んだらいつでも相談してください。盆も正月も関係なく、メールだったら対応できます(実際は音声言語表現で対話した方が効率がいいのですが)。他の授業の指導案の作り方と違うようですが、指導案の書き方は千差万別です。でも、「目標・学習・評価の一体化」は不変のものであるべきはずです。

14)なんで教育改革が今必要といわれているのか、結局時間がなくて話せませんでした。またの機会に話せたらと思います。

15)教職デザインコースは、教職大学院教科教育・学級経営実践コースと一体です。大学院の授業もウエルカムです。是非、担当の先生に言って参加して、現職院生と交流してみるといいと思います。私の授業はいつでもOKです。

16)来年度もこんな風な授業をしようと思っています。後輩に「教育実践基礎論」ってどお?と聞かれたら、「めちゃくちゃ厳しいよ。無駄欠席したら成績下がるし……。」と伝えておいてください。

17)来年度の学部3年生の授業「実践セミナー」で国語模擬授業を担当する可能性が高いです。国語の授業をディープに考えてみたいという人は、選択してください。

18)それではみなさん、お元気で。