Pay it Forward,By Gones

上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

正欲


2023年日本 JMAXシアター上越鑑賞

公開されて、観に行こうかどうかは迷っていたのだけれど、原作は「桐島、部活やめるってよ」の朝井リョウ、監督は「二重生活」、「前科者」の岸善幸ということで、どちらの雰囲気も好きなので、公開終了前ぎりぎりで観に行った。

いかにもキラキラの俳優新垣結衣なのだが、新垣結衣をここまでくすんだ人のように描くのも難しいだろうと思うほどに、キラキラ感は全くなかった。こういう演技もできるんだと思った。生きる気力も無く、毎日に張り合いもなく、周囲からの結婚プレッシャーに疲弊して、死ぬ気持ちがどんどん募っていく。本当に上手い俳優って、容姿だけがもてはやされるのではなく、どんな人にもなれるという所なんだと思った。

容姿だけが先行すると、その後の俳優生活って、難しいんだろうなとも思った。広瀬すずとか、有村架純とか、容姿が先にもてはやされて登場してきたけれど、やさぐれている演技も上手にできるから、いろんなものに出演し続けているんだろうな。

さて、「正欲」なのだが、題材になっている「フェチ」ってそれほど引くものではないと思ったのだけれど、原作もこのフェチを扱っているのか?映画用に映像化できるものに変えたのかはわからないのだけれど、「おれ、水が吹き出る姿が好きなんだ。」って、平気で言えると思うのだけれど。「おれ、田舎の山村の風景が好きなんだ。」と同レベルなのだが、当事者は違うのだろうか?「富美子の足」ぐらいのフェチ度だったら、引くというか、公表できなく、悩むのは分かるんだけれど。

それは置いておいて、最後のシーン、新垣結衣稲垣吾郎の対決は、名シーンだった。町山智浩さんがラジオで言っていた「桐島、部活やめるってよ」の神木隆之介と東出昌弘の対決を彷彿とさせるものだった。あの新垣結衣のひとことが、「桐島、部活やめるってよ」の「世界と繋がっている」に匹敵する、「人間として生きていく糧」を訴えているものだった。

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