202X年勉基法が……「それってどういう意味ですか？」「言葉を学ぶのは、その言葉を通して、書かれてあるもの、言っているものや人にアクセスするためじゃないですか？」「考えたこともなかった。」「ナラザキ先生は私にアクセスするために今、言葉を使ってますよね？」そうかぁ。 #勉基法 vol.101
202X年勉基法が…「古典を学ぶのは、昔の人にアクセスするため？」ナラザキは訊いた。「そうですね。人とは直接交信はできないけれど、昔の人の考えにはアクセスできますよね。」「そのためには古文を読めなければならない、か。」「私だってナラザキ先生にアクセスするために…。」 #勉基法vol.102
202X年勉基法が…「ナラザキ先生にアクセスするために、手を替え品を替え…。」「え？」「いえいえ、何でもない。」カナタは子どもっぽく笑った。（ったく、気づかないふりか？）「ナラザキ先生は受験科目に古典が必要ない生徒に今まで何と言っていたんですか？私立理系の生徒とか。」 #勉基法vol.103
202X年勉基法が…「高校生は学ぶ必要があるって。」「え？必修科目以外は古典やらなくてもいいですよね？」「え？でも履修しているんだから。」「国公立大学受験しなくなった生徒は、古典の時間どんな感じなんですか？」「うーん、寝ている人もいれば、内職している人もいるかなぁ。」 #勉基法vol.104
202X年勉基法が…「じゃあ、ナラザキ先生は、一部の生徒しか授業で相手にしていないっていうこと？」「はぁ、そうですかねぇ。」「古典が必要ないと思っている人は、本当に必要ないのかな？」「入試には必要ないですよね。」「高校って入試のために勉強するところなんでしょうか？」 #勉基法vol.105
202X年勉基法が…「え？入試のためじゃないんですか？」「ナラザキ先生は、大学進学しない生徒が多い高校には勤めたことはないんでしたっけ？」「ありますけど。」「その時はみんなが内職していたり、寝ていたりしたんですか？」「いえ、その時は、古典の劇をやったり、群読したり。」 #勉基法vol.106
202X年勉基法が…「入試で必要な生徒もいたんですよね。」「はい。」「入試で必要な生徒は、その授業を不必要だと思っていましたかね？」「うーん、どうでしょう。そんな生徒も楽しんでいたように見えました。」「じゃあ、古典を学ぶって、入試の有無に関係ないことじゃないですか？」 #勉基法vol.107
202X年勉基法が…「はい。」「どうして？」「古典を楽しんでいたとおもうから。」「じゃあ、古典を学ぶ意味って、ナラザキ先生にとっては『古典を楽しむ』ことなんじゃないですか？」「そっかー。なんだかわかってきたような気がします。でも、『私にとって』でいいんですか？」 #勉基法vol.108
202X年勉基法が…「少なくとも、学習指導要領には『古典に親しみ』という文言があるのだから、大丈夫ですよ。」「え？そうなんですか？わたし、『学習指導要領』なんて、最近全く読んでいないんですよね。」「採用試験の時は読んだでしょう？」「はい。すっかり内容を忘れています。」 #勉基法vol.109
202X年勉基法が…カナタは、ナラザキの笑顔を見てほっとした。最近ナラザキはピリピリした人を寄せ付けないような雰囲気を作っていて、カナタは話しかけづらかった。しかし、ナラザキから話しかけてきて、久しぶりに多忙な仕事の中にも息をつける時間を持てた。ヤスロウに感謝だ。 #勉基法vol.110
2020年5月22日〜2020年5月31日
