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上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

国語教育の危機

知り合いの国語教師が「今話題になっている」と言う本だから,読んでみた。

新学習指導要領,共通テストの導入により,国語教育が危機を迎えるという。ということは,現在高等学校国語科授業がおこなわれている各教室では,「危機」は訪れていないというのだ。

現行の学習指導要領においても,新学習指導要領においても,「生きる力」を育む教育を目指しているのだが,今おこなわれている国語授業で,それを意識しておこなっている教師は全体の何%だろうか?どのくらいの国語教師が,国語で身につく力を「問題を解いて正解を書く力」以外と設定しているのだろうか?

特別ではない,普通の中学校や高等学校に行って,授業中に廊下を歩いて教室を覗いてほしい。国語の授業で,学習者が「活動」をしている教室がどのくらいあるのか,見たことがあるのだろうか?

これからおこなわれる共通テストの問題を問題にしているようだが,現在のセンター試験を受けるのは,高校3年生のうち,約半分である。約半分の「国語教育」について問題にしているのだろうか?

きっとこの本は,現場の国語教師の不満や不安を「よく知っている」人が,今まで通りの,自分が受けてきた,多くの「国語教師」が好む授業をやっている教師向けに「今のままの『訓詁注釈』的教師主導,学習者の主体性を奪う国語授業で構わないんだよ。」という「逃げ場」を与えるために書かれたものなんだろう。その意義を十分に果たしているすばらしい本であった。