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上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

スパイの妻

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日本 2020年 高田世界館で鑑賞

高田世界館は、本当にここ数年いい映画をかけていると思う。ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を得た時は、話題になったが、その後新潟市の映画館でも、あっという間に終わってしまったので、観ることができなかった。そこで高田世界館でかけられるということで、今年の1本目をこれにした。

蒼井優演じる聡子がどんどん変わっていくのが、面白いし、うまいなぁと思った。この映画は蒼井優のうまさが全てだと言ってもいい。初めは夫にベタベタに惚れ込んでいる娘だったのが、どんどん思い切ったことが出来る女性へと変化し、全てが分かったときに、達観する視野を持つようになる。

でも、全ては夫と一緒にいたいという思いがある。これは夫婦の物語だ。「相手を信頼するためには、共犯者になるのが一番」というフレーズを最近どこかで耳にしたのだが、まさにそれで、共犯者になることで、夫との繋がりを確かなものにしていく。解説を始め読んだときは、夫(高橋一生)が妻を省みない冷酷な人間として描かれていると思っていたが、実はそうでもなかったのが面白かった。人間らしい心を持った「スパイ」というところも、観ていて安らげるところがあった。

一点、勝手な注文を付けるとすると、東出昌大の演出をもっと狂気じみたものにするとよかったなぁと思う。「沈黙—サイレンス—」のイッセー尾形ぐらいの冷酷さを個人的に求めてしまった。

それにしてもいい映画だった。観てよかった。