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上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

ようこそ映画音響の世界へ

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高田世界館で鑑賞

今の映画の音、特に人の発する声以外は、ほとんどが作られたものである。映画でどのように音を作って、迫力のあるものにしたり、メロウなものにしたりしているのか。映像作りと同じくらい音響作りは苦労のかかる大変な仕事だということを描いている。NHKの特集で放映されるような番組だが、映画音響だから、映画館で観る必要がある。自宅ではあの映画館のような音響は体験できないから。

1970年代くらいまで、映画において音は全く重要視されていなかった。ハリウッド映画のピストルの音は、それが同じ制作会社だったら、全ての映画で同じものだった。ところが、スター・ウォーズの音は全て現実にはあり得ない音ばかりで、その音を迫力あるものとして作ることによって、映画が大ヒットした。映画を観ている人はそれが「リアル」なものだと感じたのだ。実際のところ、宇宙空間で戦闘機が飛んでも、音は全く聞こえてこないのだが。

チューバッカの喋り声も、いろんな動物の鳴き声を採取し、組み合わせ、時には逆回しをして作ったということだ。今までになかった音を作り出すので、かなり苦労したらしい。

映画館は今や、5.1サラウンドの音響が当たり前になっているが、それをさせたのが「地獄の黙示録」だ。制作側は映画館の設備にそれを求め、映画もそのように作った。ヘリコプターのプロペラ音が映画の観客を旋回して飛んでいるような音響には、度肝を抜かれた。スクリーンに映っていない音も聞こえて、後ろに何があるのかを感じさせてくれる映画は新体験だった。

考えてみれば、この映画で紹介されている映画を結構観ている。それは、話題になって大ヒットしたものだからだ。ということは、音響の素晴らしさというのは、映画の素晴らしさに直結するということの証明だ。

私もかねてから、「映像よりも音が良ければ大丈夫」と思っていた。映像はチープでも、粗くても、音がはっきり、綺麗に出ていれば、そのビデオは観るに耐えるものになる。だから、マイクを良いものにしたり、Macでの編集も音を工夫したり、BGMと映像をリンクさせることによって、ちょっとした感動を呼ぶ術も覚えた。

最近、高田世界館は上映期間1〜2週間のものが多い。ちょっと気を抜くと見逃してしまう。この映画は映画館で観なきゃ意味が無いものだけれど、シネコンでは絶対にかけないものだなぁ。10月30日(金)で終了です。