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上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男

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2019年 アメリカ 於:高田世界館 今年4本目の映画館での鑑賞

#たまむすび #アメリカ流れ者 で #町山智浩 さんが照会し、その映画の内容を聞いて衝撃を受けた。テフロン加工には、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)が含まれ、それは生物が分解できないものであり、どんどん体内に蓄積されていくという。そして様々なガンや不妊を発生させるという。地球上の90%以上の生物に蓄積されていて、99%以上の人類の体内に蓄積されていると映画では言っていた。

そんな有害物質の規制が始まったのは2019年だった。もちろん日本でも規制はされている。

www.meti.go.jp

え?知っていた?そんなこと話題になった?2〜3年前じゃん。それを知ったとき、うちの家庭ではそれよりももっと前に購入したテフロン加工(商標だから、本当はデュポン社の物しか使えないらしい)の鍋がたくさんあった。そして、長年使っていたから、そのテフロン加工が剥がれているところもあり、その剥がれた部分は料理とともに我々の体内に蓄積されているのは確実だ。

それを知ってすぐさま鍋を全て取り替えた。最近のは「ダイヤモンドコート」と言っているそうだ。これも商標かな?

テフロン加工は鍋だけではなく、撥水性があるので、防水加工のレインコートや傘などありとあらゆるものに使われている。そしてその製造過程での排水にも大量に含まれていて、不法投棄(デュポン社は、有害と知りながら垂れ流していた)されていた。

ある農場夫の訴えを聞いた主人公の弁護士が、大量のデュポン社の資料から、不正(犯罪)を立証し、被害に遭っている住民のために補償を勝ち取ろうとする話だ。ネタバレになるが、驚いたことに、今でも訴訟は続いている。

これはこの事件に限ったことではないが、様々な葛藤が描き出されていた。

  • 金(給料)のために不正に荷担するのか、正義のために金にならないことをするのか。
  • 正義のために家庭を省みないのか、家庭を優先させて今の仕事を縮小するのか。(「正義」を「自分の体」にも置きかえられる)
  • 体や精神に悪いと思いながらも、生き延びることを選ぶのか、体に悪いことはきっぱりと止めるのか

「正しいこと」、「正義」を貫くためには、それ相応の時間と労力と精神力が必要になる。それらを折るために「敵」は時間をかけて、相手の心を折らせるという手段をとる。「敵」は、人手と財力があるから、いくらでも長引かせることができる。戦うには心を折らさないことが必要になる。

派手な、綺麗な、カタルシスが生まれる映画もいいけれど、スポンサーの関係で、テレビでは絶対流れない、いろいろなものを暴いて描く映画も観たいと思ってしまう今日この頃。