Pay it Forward,By Gones

上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

由宇子の天秤

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凄いとしか言えない映画を観てきた。#町山智浩 さんに言わせると、今年観た中で最高の映画だそうだ。どうせ新潟じゃかけられていないだろうと思いながらも検索したら、イオンシネマ新潟西で上映されていた。びっくり。それでも、イオンシネマ新潟西は攻めるプログラムをするから、さもありなん。シネコンにしては、シネ・ウインドとか、高田世界館並の映画をかけてくれる。

驚いたことに、イオンシネマは55歳以上いつでも1,100円で観られる。え?いつから?歳を重ねて唯一得したことのような気がする。

フリーのドキュメンタリー作家、監督の主人公が高校生自殺事件を取り上げた番組制作に関わる中で、配給するテレビ局とのしがらみ、そのテレビ局と交渉するプロデューサーとの交渉、そして自分の家族が関わるできごとの事態収拾で、ドキュメンタリーの番組制作側、取材側、取材される側の気持ち(天秤=バランス)がどんどん揺れて行っている姿を描く。

その揺れは、説明する言葉やBGMで表されてはいず、ドキュメンタリータッチの映像として映画が描かれている。由宇子が映像を作る側(映画中の役)から、映像を撮られる側(この映画のカメラ)になっていることが、見事にこのカメラワークで表現されていた。

今まで観た映画で、森達也監督の「#FAKE」や、東海テレビの「#さよならテレビ」に通じるものがあった。全てきれい事じゃないんだ、映像制作している時点で、もう制作者の意図が入り込み、「事実そのまま」なんてあり得ないし、「事実」なんてどこにもないんだということを感じてしまう。

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設定が唐突すぎると感じる場面も無きにしも非ずだし、終わらせ方はあんまり納得できるものじゃないけれど、久しぶりにこの映画を誰かと語りたいと思うものだった。
#由宇子の天秤