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上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

チャットで連句

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コロナ禍のなか、地域によっては授業中の話し合い活動自体を禁止しているところもあるという。じゃあ、そんな中でも共同創作活動ができないか?と思い、一切音声を発しない、チャットを使った連句の創作を学部授業で試みた。チャットはGoogleClassRoomのクラスのコメント機能を使う。グループごと別々に課題を出すのだ。ディスカッションにより選ばれた句は、こちらで用意したGoogleスプレッドシートに随時入力してもらう。

グループごとに集まらないで、全員が黒板に向かいながら、ディスカッションをしているのは、不思議な感じがした。

マンガ「ほしとんで」の5巻が連句を取り上げていたので、それを参考にして、授業中に7句付けることを目標にしてみた。

ルールは以下の通り

  1. 入力するシートに示された各句への《条件》を満たす句を創作する 。
  2. 句の候補をそれぞれが出し合い 、グループでの合議で決定する 。
  3. 2句目を決定したら3句目というように、順番に決定していく。(そもそも、そのようにしないと連句として成立しない。)
  4. グループディスカッションには、GoogleClassRoom の課題のグループコメント(チャット)を使い、文字のみで行う。(声を出さないでどれだけディスカッションができるのかも体験する。)
  5. 時間内に完成させる。
  6. 評価はディスカッション(チャット)内容と作品の質によって行う。

この実践で、一番面白かったのは、ディスカッションの内容をつぶさに見て取れるということだ。どんなアイディアを出しているか、何を決め手に句を選んでいるか、文字で残っているから遡ってディスカッションの流れを追うことができる。学生さんはチャットのみだったから大変だったけれど、これを追えるというのは、授業者としてはありがたい。

授業中、ちょっと課題内容を取り違えているな、というところには適切な指示を与えることができる。

スプレッドシートを見ると、どのグループがどのくらい進んでいるのか一目瞭然である。

しかし、学生さんにとっては、かなりのストレスだったらしい。そして対面のディスカッションがいかにありがたいかを実感したようだ。対面のディスカッションをもっとより良くするためには、チャットのディスカッションで不便だと思ったところを意識して補う必要があると感じたようだ。

あえて不便な、シバリのあることをすることで、新たに見えてくるものがあったようだ。

連句はというと、「付け」(=前の句から連想して句を考えること)と「転じ」(=前の前の句からガラッと世界を変えること)では、「転じ」が難しいようで、どうしても前の句に付けることによって、「転じ」ができず、関連してしまう世界になるようだ。

でも、以前に授業で句会を開いたが、連句も面白そう。時間があったら、対面、音声言語を使ってやってみたい。