Pay it Forward,By Gones

上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

ドライブ・マイ・カー

f:id:F-Katagiri:20220215142858j:plain
三浦透子って、どこかで見たことがあると思ったら、「カムカムエヴリバディ」に出ていたんだな。映画と雰囲気が全く違う。

高田世界館がイベント以外でこんなに混んでいたのは初めてだ。駐車場が満杯だったが、支配人が、誘導してくれて、詰めて駐車できたので、観ることができた。1階席混んでいるから初の2階席?と思ったけれど、2階席の正面も空いていず、脇の席に座ったら、こんなにスクリーンを斜めから見ないといけないのか、と思って敬遠し、1階席の2列目に座った。初めてこの席に座ったけれど、ここの席いいかも。前の人の頭が気にならないし、ほぼ上を見なければならないのだが、椅子の座り心地が座り心地だから、仰向け近くでも結局お尻はいたくなる。おんなじ事。

さて、3時間超の映画だったが、全く退屈することが無く、何が起きるんだろう?何が起きるんだろう?と思いながら見ていたら、何と高田のコメリが出てきてびっくり。
www.joetsutj.com
主人公たちが広島から北海道へ行く途中防寒具等をここで購入した。でも、広島から北海道まで、高速道路でいけばいいのだが、なぜか下道に降り、もしかしたら親不知も通っていた?風景に変化があって面白いからいいのだけれど。

退屈しなかったわけ

3時間全く退屈しなかった理由を考えてみたら、こんな理由が挙げられる。全て私の個人的な趣味に合っていることなのだけれど。

「お仕事」ムービー

私は職務に専念する姿を描いているものが好きだ。渡利みさき(三浦透子)が親から仕込まれた運転技術で、家福悠介(西島秀俊)の愛車の雇われドライバーとなる。家福は自分の大事な自動車を運転されたくないのだが、渡利の「ドライバーさえいることを感じさせない」ドライビングテクニックを気に入っていく。気に入ったからといって、急に二人の関係が縮まるということではない。どちらもビジネスライクに淡々と時を過ごしていくのがいい。

みんなが痛みを抱えている

破天荒なお気楽ハッピーエンド映画も大好きだが、登場人物それぞれがそれぞれの人生において、痛みを抱え、不幸をしょっていくその「救われ無さ」を持って足掻いている姿がとてもいい。これこそ「人生」という気がする。西尾維新原作の「化物語」もそんなアニメだ。

渡利は地滑りで家が倒壊し、母を亡くし、家福は家族を突然亡くす。それぞれが「自分のせい」と抱えて生きていき、誰にどんな慰めの言葉を言われても、「あなたのせいじゃない」と言われても、救われないし、自分を許さない。

人生なんて、ちょっとのことで救われたり、お先まっ暗にはならない。いろんなことが重なって、少し救われたり、少し絶望に向かったりする。そこにリアルな描写を感じる。

静かにゆっくりと破綻へと進んで行く

村上春樹の物語そのものだった。いきなり大怪獣がやって来たり、宇宙人が攻めてくるのではないけれど、何かおかしい、何か違う。別の世界になった様だというのが上手く描かれている。いわゆる「見上げてみたら月が2つあった」とまでは行かないけれど、何かの違和感で世界が変わったを感じさせるものだった。

また、人は喉が渇いたら水を飲むように死んでしまうし、人を殺してしまう。数分前には思いもしなかったことがいきなり降りかかる。その積み重ねで最終的に破綻していくという感じが、恐ろしくて、ワクワクして引きこまれてしまう。

「生きる」意味

村上春樹の世界、「それでも生きていく」ということを観ていて思わせてくれるものだった。何のどんでん返しもないし、何の派手な演出もない。淡々と生きていくということが描かれていた。

じんわりと「見て良かった」と思った。映画っていいなぁと思わせてくれた。ラストシーンはどういう意味で捉えればいいのだろう?渡利には幸せになってほしい。