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上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

ディエゴ・マラドーナ 二つの顔

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ユナイテッド・シネマで鑑賞 2019年 イギリス

サッカーファンでありながら、マラドーナが活躍していた時は、大学生だったので、サッカーなんてワールドカップをちらっとしか見ない時だったので、マラドーナがどれほどすごいプレイヤーなのかわからずにいた。

2019年制作の映画だが、先日亡くなってしまったので、日本でも上映されるようになったのだろうか?

とにかく、マラドーナは虐げられていた人たちにとっての身方、英雄、神であったからこそ、引退してからの行動はいろいろスキャンダルだったけれど、今でも愛されているというのがわかった。

フォークランド紛争が劣勢のままメキシコワールドカップが開かれ、準決勝で紛争の代理戦争と呼ばれたアルゼンチン対イングランドが戦った。そこでの「神の手」+「5人抜き」でアルゼンチンは勝利をつかみ、決勝では西ドイツに勝ち、優勝する。

「神の手」も「5人抜き」もそれぞれ映像で見たこともあるし、有名なプレイだが、このイングランド戦で行われたということをこの映画を見て初めて認識した気がする。1試合でこんな奇跡的なプレイを2つもして、しかもイングランドに勝つなんて、それだけで神格化される理由は充分にある。

BCバルセロナからSSCナポリに移籍していたのだが、1980年代のセリアAの応援なんて、今のJリーグだったら無観客試合レベルのひどいことを言っている。特に、北部の南部への差別意識が強く、南部にあるナポリは、生活環境も良くなく、虐げられていて、北部チームのサポーターは、例えば、「臭い、風呂に入れ」とかいう汚い言葉をチャントで張り上げる。もちろんナポリのサポーターもそれに対抗してはいるのだけれど。

そんな時代にマラドーナナポリに入り、今でもビッククラブのユヴェントスやら、ACミランなんかを下すのだから、すごいことだった。サポーターが熱狂するのもうなずける。しかしこの熱狂がマラドーナをどんどん追い詰めていくというストーリーだった。

ナポリでは英雄のアルゼンチン人が、次のワールドカップイタリア大会では、準決勝アルゼンチン対イタリアの試合で自国の代表と戦うとなった時、サポーターとしてはどちらを応援するのか、これは悩ましい問題だ。

例えば、アルビレックス新潟を優勝させる活躍をした外国人選手がいて、ワールドカップでその外国人選手が代表に入っている国と日本が対戦した時、私はどちらを応援するか。多分その国なんだろうと思ってしまう。本当のサポーターは代表ではなく、代表に誰がいるかで応援するかどうかを決め、代表戦よりも地元チームの優先順位が高いということは良く言われる。

マラドーナの活躍により、イタリアを二分してしまい、マラドーナを守っていた勢力もどんどん離れていってバッシングを受けるようになったというストーリーで描いていた。きっとそうなんだろう。

今、マラドーナが亡くなって、どんどん神として崇める存在になっていくんだろうと思う。