Pay it Forward,By Gones

上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

声の表現の効果と相手に響く声の出し方


新潟県教育委員会主催2022年度アカデミックインターンシップの講座を昨年度に続き今年度も開催した。

今年度のテーマは、「音声言語表現活動」とした。こどもアナウンス発声協会の草田道代さんと繋がりが出て、アナウンス、発声技術の専門家の指導が可能となり、開催することができた。

私は音声言語表現活動を専門としているが、それは学校教育の中でどんな活動が学習者の興味を引くか、学習者はどのように活動するか、どのような授業プログラムを作っていくか、ということの専門で、どのように発声するか、どのようにアナウンス、朗読は全くの専門外で、訓練も受けたことがないので、私もこの講座の開催をとても楽しみにしていた。

高校生2名が受講を希望してくれた。驚いたことに、2人とも県内の遠方より来てくれた。時間とお金をかけて来てくれるだけあって、とても熱心で、聡明で、自分の個性を表現できる生徒さん達だった。こちらも俄然やる気が起きる。

片桐研究室のゼミ生2名がアシスタントとなり、生徒さん達と一緒に音声言語表現活動を勉強した。

プログラム内容は次のようなもの。

《1日目》

  1. プレゼンⅠ 自己紹介
  2. 相手に響く声の出し方とその練習
  3. 話の構成の仕方
  4. 時間内に話を修める技術と練習
  5. プレゼンⅡ 自己紹介(2回目 1回目の自己紹介を修正し、プレゼンする)
  6. ふりかえり

《2日目》

  1. 朝の発声練習
  2. 様々な音声言語表現活動体験(朗読・アナウンス・群読)
  3. 効果的なプレゼンの作り方
  4. プレゼンⅢ ショウ&テル
  5. ふりかえり
  6. プレゼンⅣ この講座で学んだこと
  7. 評価とふりかえり

今まで自分は30年以上、教師として声を出していた。通る声は出せるという自身はあったが、「腹式呼吸で声を出す」という練習をして、全然できないんだな、と感じた。これは、声楽での歌い方に通じるのだろうか?喉で声を出しているから、自分はちょっとたくさん喋ると声が出にくくなるのか?とも思った。2日間ではまだまだ分からないことだらけだったが、「音声言語表現に即効性はない」ということだから、意識して続けていかなければと思う。私の習慣「朝の平家物語音読」も、はらから声を出してやってみよう。

参加した生徒さんは、1日目と2日目でのプレゼンが全く違って、みるみる上達していった。場の空気感、受け入れ感が1日目と2日目で違った(仲良くなった)と言うこともあるのだろうけれど、プレゼン時の「緊張」をどうコントロールすればいいのか?が身についてきているのが分かった。

音声言語表現というと、定型、セオリー重視の指導が良くされていると思われる。例えば、面接指導で、「まず、先に結論を言って、その後それに付随することを述べる」とか、「ナンバリングとラベリング」とか。でも、そういうのをみんながやると聞いている方はだんだんイライラしてくる。同じ表現が続くと、「馬鹿にされている」という気分になる。特に音声言語では。だから、「セオリーに縛られることはない」という話もした。

事後研修が12月にあり、そこでポスターセッションをするので、その事前練習として、今回の講座の集大成として、「この講座で学んだこと」というテーマで最終プレゼンをしてもらった。

2人ともホワイトボードに印象づけるワードを書き、ストーリー性のあるプレゼンをすることができていた。この講座の効果は十分にあったのかな?と自画自賛している。

参加した生徒さんや、うちのゼミ生たちにとって、かなりハードな活動だった気がする。コロナ禍の中、声を出す活動はどうなの?という思いもあるけれど、換気をしてマスクをして、声を出すのも疲れただろうと思う。

この講座のパッケージ、教員志望学生だけではなく、現職教員向けに有料で開催してもニーズがあるように思える。もちろん、草田さんがいなければ成り立たないのだが、今後いろんなところでできたらいいな、と思う。