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上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

1987、ある闘いの真実 2017韓国

シネウインドで鑑賞
またもや韓国映画,スゲーと思った。光州事件から7年後,この事件をきっかけに韓国大統領直接選挙を勝ち取った。

赤狩り」と称して,大学生が拷問の末殺された。当局は真実を隠そうとするが,それを知った役人,ジャーナリスト,活動家たちが真実を暴き,「赤狩り」の部署,南営洞警察を機能停止に追い込む。

1987年と言えば,私は高校2年生。当時,担任(社会科)が「普通,催涙弾は上に向けて放射するのだが,水平放射してそれに当たった大学生が死んだ。」というような話をしていたことを思いだした。それって,これだったのか。そんなシーンがラストに来る。

最初はドキュメンタリーチックな映画だけれど,そのうち人間を描くようになりどんどん引きこまれていく。過激な暴力シーンもふんだんにあるが,それだけで嫌にはならず,あるときはスカッとしたり,あるときはむかっとしたり,感情移入していく。

登場人物はほとんど,「自分の仕事を体を張って全うしよう」としている人たちである。「悪役」も,それに対抗しようとする人たちもだ。

最悪役の南営洞警察所長も,自分の仕事を忠実に熱意を持ってこなしているだけである。もちろんそこに法律違反や反人道的なことはおこなっているのだが。そして,真実を暴くきっかけを作る拘置所の所長も,法律に忠実に警察所長に体を張って対抗する。

所長の暴挙(拷問の末殺した大学生を,解剖せずに火葬させようとする)に対抗した検事も,自分の身分がどうなろうとも,自分の仕事にプライドを持って,脅しに屈せず大儀を遂行しようとしていた。

そんな登場人物がぶつかる勢力争いや,人間模様に引きこまれてしまった。場面をアンダーグラウンドなところに置きかえると,完全に「アウトレイジ」や,「仁義なき戦い」の世界だ。南営洞警察所長が梅宮辰夫似だったからそう思えたのかもしれない。

唯一,ほっとするのが女子大生ヨニ役のキム・テリだ。めちゃめちゃ可愛い。初めは「でもなんてするから,治安が悪くなる」と,関わりたくないような気持ちを持っていたが,そのうち自分事になり,ヨニ自身の意図以上のことを,意図せずおこない社会が動いていく。

ラストシーン,「タクシー運転手」を観ていた人は,胸が詰まるシーンがある。いやぁ,すばらしい映画だった。

韓国の歴史にとって,闇となっているものを,映画化して明らかにし,しかも,どろどろと暗くするのではなく,「タクシー運転手」では,コメディーチックに,「1987、ある闘いの真実」では,人間ドラマとして描く。韓国映画ハンパない。日本映画に,こんなふうに歴史に切り込むものが,あるのだろうか?