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上越教育大学 教職大学院 教授 片桐史裕のブログ

三密を避けながら国語科授業で「主体的・対話的で深い学び」を実現するやりかたとは?

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私の受け持っている教職大学院プロフェッショナル科目「中学校高等学校国語科授業づくり演習」で、昨年の履修者と今年履修予定者と、埼玉の高校国語の先生とzoomで繋いで討議を行った。現在本学は休講中なので、「annex(別館)」として開いてみた。新潟県内の学校は、今再開されている(本学附属学校を除く)。そこで、国語の授業は、三密を避けなければならない(避三密)が、そこで授業をどうしたらいいのか、どうすれば付けてほしい力が付けられるのか?ということのアイディアを出し合った。

上越教育大学 新型コロナウイルス感染症の拡大防止に対する令和2年度前期授業の実施に関する取扱い

本学が出した「新型コロナウイルス感染症の拡大防止に対する令和2年度前期授業の実施に関する取扱い(2020.3.30)」では、授業に関しては以下のように示している(抜粋)。

  • 座席はできるだけ間隔を空けて座らせる。
  • 近距離での会話や大声での発声をできるだけ控える。
  • 講中は、常にマスクを着用する。
  • マスクを着用しない場合は、ディスカッション形式の授業は控える。
  • 近距離での会話を慎み、咳エチケットを徹底する。
  • 演習、実験、実技、実習 1グループ当たりの学生数を少なくすることに努める。

新潟県内学校は、授業開始しているので、上記のようなものが適応される(または、もっと厳密なもの)と考えて良いだろうということで、このような状況下での国語授業についてアイディアを出し合った。ただ、感染症対策の専門家ではないので、エビデンスがあるわけではない。しかし、何でもかんでも自粛自粛で、当たり障りのない、誰からも文句が言われないような授業をこの新学期にやっていけば(つまり、チョーク&トークの一斉授業)、人間関係形成なんてできたものじゃない。いやいや、生徒が喋ることもできないんだったら、教師も喋れないでしょう?

なお、新潟市教育委員会のガイドラインでは、飛沫がかからない十分な距離が保たれ、換気が充分であれば、必ずしもマスクの着用が無くとも発言、発声はできるとしている。

上記のような形態が許されている状況でも、これから書くことは問題があるという場合はご頂いたご意見を元に、適切なものにしていきたいと思っている。

新学期のアイスブレイクは?

  1. 自己紹介は名前等だけを口頭で言い、例えば、スマホ内に入っている自分の好きな一曲の好きなフレーズをちょっと流す。
  2. 各自が自宅等で録音したものを流す。

音読は?

  1. 最低条件、マスクをつけている条件でのみ音読はできるのだろうが、避三密であれば、ペア音読のようなちょっと2人の距離が近くなり、顔を互いに向ける可能性があるような形では難しいのではないだろうか?つまり、一斉に前を向き、普段喋るような大きさで(声を張り上げないで)音読は可能だろう。
  2. 範読をスマホ等で録音させ、それをもとに体育館、グラウンドで練習させ、録音させたものを持ち寄り、教室でスピーカーを使い流す。(ちょっと手間がかかるなぁ。)学校が休業しているところでは、録音して、教師に提出するという課題を出しているところもある。

ペア音読というと、隣同士というイメージがあり、席の隣同士は近づき易くなる。教室が一斉に音読し始めると、相手の声を聴くために近づくこともあるので、それを避けるためには、一斉音読しかないかな?とも思う。また、机を向かい合わせにくっつけることで、ある程度の距離を保てる(約2mは確保できる。ただし、背面の人とは近づくことになるが、飛沫は後ろに飛ばないはず(そもそもマスクをつけている)なので、距離を保つためにも机を挟んでのペア音読もできる可能性はある。

また、声の大きさをコントロールさせるいい機会になる。日本群読教育の会では、「声のものさし」という図を作っている。
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特に小学校低学年くらいだと、音読というと精一杯声を出すべきだと思っていることが多い。これを機に時と場合により声の大きさをコントロール力を身に付けさせるのもよいのでは無いか?と思う。

グループ討議は?

  1. 先にも書いたとおり、机を挟むことによって、距離は保たれるので、4人が机をくっつけての討議は可能なはずだ。もちろんマスクをつけている状態でである。
  2. 対面してのディスカッションが憚られる場合は、ホワイトボードや模造紙などを用意して、筆談にする。ホワイトボード討議にする。
  3. 対面しているのだから、情報端末を使わなくてもできることをするべき。
  4. 討議中の進行、指示、アドバイスのタイミングに関して、普段なら教師が「ちょっと聞いて」と声を張り上げて言っていたが、それは憚られるので、チャイム、アラームなどで代用する。

発表は?

  1. 教師が前で喋っていてもいいのだから、児童・生徒も前に出て発表は可能なはず。
  2. ホワイトボードに共同で書いたことを元に、他のグループに行って発表も可能なはず。
  3. ホワイトボード等を他のグループに巡回していくというのは、手についたウイルスがホワイトボードにつき、それで蔓延していくという可能性があるので、避けるべき。

zoomを使ったオンライン授業でできることとできないこと

  1. ブレイクアウトルーム(zoomの拡張機能 設定は、webブラウザ上でおこなう)で、グループに分けてのミーティングが可能。
  2. 有機能の「ホワイトボード」は、共有した人しか書けない。手もとの紙やホワイトボードに書いて、ビデオに映すことで、一斉に他者の意見、答え等が見られる。
  3. 一斉音読は不可能。zoomは、声の大きい人の音声しか共有されない。つまり、他人の声を聴きながら声を合わせて音読するということはできない。データ転送量が小さいため、自動で切りかえていると思われる。他のオンラインサービスだったらできるかもしれない。
  4. 一斉音読は不可能なので、交代しながら音読(いわゆる「。よみ」)は面白いかもしれない。誰が今読んでいるのかを確認しながら自分の番を待つことで、集中して音声を聞くことになる。

オンライン授業だと、これもチョーク&トークに陥りがちになり、児童・生徒が授業に参加しないことになってしまう懸念があるので、いろんな楽しめるアイディアが必要だ。

終わりに

この新学期、クラス開き、学年開きで交流のない授業を延々続ける事による被害は甚大であると思う。特に新入生にとって、交流を避けることによる人間関係づくり機会の逸失は大問題だ。今後の学校生活に関わってしまう。「人と交流することは悪いことだ」というイメージを植えつけかねない。もちろん感染を避けるという大前提はあるが、避三密ということをゲームの絶対ルールとして、その枠内で授業に楽しく参加させるという力量が教師に求められる。「シバリ」を楽しめなければ、このような世の中は渡っていかないと思う。